3. 遠赤外線ヒーターと近赤外線ヒーターの比較

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 被加熱物に熱を与えるにはホットプレートが代表する直接(接触)加熱、熱風加熱が代表する。間接加熱、遠赤外ヒーターが代表する放射加熱の3形態がある。何れも表面加熱と言える。被加熱物の表面で吸熱し内部へは熱伝導で伝わる。しかし直接加熱と間接加熱はその様態は同じであるが、遠赤加熱は決定的に異なっている。

1. 遠赤外ヒーター

 我が国において遠赤外ヒーターは加熱・乾燥・硬化・暖房・保温・医療の熱源として広く知られるようになり普及してきた。遠赤外ヒーターの表面はセラミックス材料で構成されている。遠赤外放射セラミックスは加熱すると分子振動や結晶格子振動を起こし、表面から3μ以上の波長が放射される。
 これに対し被加熱物の分子振動は3μ以上であるので遠赤外ヒーターからエネルギーを受ければ熱振動が励起される。このため遠赤外ヒーターの加熱は塗料やプラスチックの様な有機物や高分子物質に効率良く吸収され発熱し、水にも非常によく吸収されるので乾燥・硬化に広く使用されている。
 遠赤外ヒーターを加熱する熱源はニクロム線を使用する電気ヒーターが一般的であるが、ガス・蒸気・オイル等も使用されている。ヒーター温度は真空脱泡で30~50℃、アニールや水分乾燥で100~500℃、フイルム加熱で100~300℃、塗装乾燥で200~500℃であり、一般的に600℃以下で使用されているヒーター温度は自由にコントロールできるので昇温部、キープ部で温度を変えることができ幅方向の温度を変えることにより均一に加熱することができる。

2. 近赤外ヒーター

 外部構成は石英管であり、内部にハロゲン・キセノン等の不活性ガスを封し、タングステン・カーボン等の発熱源を設置したものである。フィラメント(発熱源)は1200~2000℃位の高温であり、パワーは強い。
 しかしフィラメントの温度は一定であり制御は困難である。また突入電流も大きい。放射波長は3μ以下であることから被加熱物への吸収率では遠赤外ヒーターに劣るため、大型設備、高電力設備となる。従って土地が安く、電気代が安い国(ヨーロッパ・アメリカ等)では多く使用されている。
 さらに色による吸収率に差異があるので注意が必要である。形状はパイプ状でパネル型は制作不可であるのでタクト運転(不連続搬送)では温度分布に不具合が生じる場合がある。