(5) 遠赤外線加熱による効果

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効率の良い加熱です(時間短縮・連続化・量産化・装置小型化)

有機物や高分子物質・水分・セラミック類は3μ以上の所に吸収体があるので遠赤外線が当たると分子振動が活発になり温度の上昇が速くなります。そのため加熱時間の短縮ができ、加熱炉の小型化が可能となります。遠赤外線効果の最たる物の一つです。
遠赤外線の波長はほとんどの物質の固有振動数と重なっています。このため多くの物質に遠赤外線が当たると構成原子団の振動や格子振動が励起され電磁波エネルギーが物質内の振動エネルギーに変わり、熱振動となり発熱するのが遠赤外吸収のメカニズムです。物質を構成する原子団のつながりは常に微振動しており、物質毎に固有振動を持っています。

物質の内部まで均一に加熱できます(品質向上・歩留まり向上)

物質の表面での吸収が大きいため、内部への熱流も大きく表面と内部の温度差がほとんどなく加熱ができます。そのため工業製品では品質が良くなります。塗装乾燥では急熱しても発泡やクラックが起きません。
食品でもスピーディーにおいしく薬効成分を損なうことなく加熱できます。

温度分布を均一にできます(品質向上・歩留まり向上)

電気式ヒーターの場合、個々にヒーター温度を変えることにより熱風炉や近赤外線炉に比べ被加熱物の温度分布を均一にすることが容易にできます。
連続搬送式の遠赤外線炉の場合は幅方向の、固定式の遠赤外線炉では全面の温度分布を均一にできます。その結果加熱物の品質向上に役立つことが多いのです。熱風加熱では風の流れの制御が難しく、温度差を生じることは避けられません。

加熱炉の温度調節が容易です(品質向上・自動化・省力化)

連続式の遠赤外線加熱炉は炉内をゾーン分割し、それぞれの遠赤外線ヒーターを制御することにより搬送される被加熱物に必要とされる温度変化(加熱ゾーン・キープゾーン)をつけられます。
その結果、品質向上と自動化・省力化に役立ちます

真空中でも効果は変わりません。

遠赤外線ヒーターのエネルギー(電磁波)は空間(大気中・ガス中・真空中)を介して伝播します。特に真空中では大気による対流が付随しない分、純粋に遠赤外線効果だけが際立ちます。

クリーン加熱が可能

塵が避けられない風を使わず、物体の表面での原子団の振動による発熱を利用する遠赤外線加熱はクリーンルーム内のクリーン加熱炉に使用され、ガラス基板(フラットパネル)・フイルム基板等の製造に活躍しています。
近年、基板関係だけでなく塗装乾燥においてもクリーン加熱の採用で微小異物混入による品質問題を解決しています。ただすべての遠赤外線ヒーターがクリーン仕様とは限りません。

環境に優しいヒーター

空気を加熱しにくいので遠赤外線加熱炉の雰囲気温度はヒーター温度より低いのが普通です。被加熱物中心に加熱します。そのため周囲に熱をまき散らすことはありません。