10. 熱量計算
遠赤外加熱の熱量計算は、単純に算出することは困難であるが、おおむね以下の計算式で算出することができる。本来は、放射伝達熱量の式に基づいて算出されるべきであるが、ヒーター、非加熱物の放射率(吸収率)、受熱面積受熱角度等の要因をとらえて算出しなければならず、実際上はかなり難しい。そこで通常の熱量計算の手順に従って算出した熱量に遠赤外効率ρを乗じて総熱量とする。ρは経験値から0.6~0.9の範囲から決定することができる。
1. 設備電力(P)
P=P0×1.1~1.2(設備余裕率) (KW)
P0=Q/860 (KW)
P:設備電力、P0:電力、Q:総熱量
2. 総熱量(Q)の算出
Q=(Q1 +Q2 +Q3 +Q4 +Q5 +Q6)ρ (Kcal/h)
Q:総熱量(Kcal/h)、Q1:被加熱物顕熱量、Q2:水分蒸発潜熱量
Q3:駆動部持出熱量、Q4:開口部流出熱量、Q5:排気熱量
Q6:炉壁損失熱量、ρ:遠赤外効率
3. 被加熱物熱量(Q1)
Q1=c1W1N(t1–t2) (Kcal/h)
c1:被加熱物の比熱(Kcal/kg・℃)、W1:被加熱物の重量(Kg/個)
N:被加熱物の処理量(個/h)、t1:被加熱物昇温温度(℃)
t2:被加熱物初期温度(℃)
4. 水分蒸発潜熱量(Q2)
Q2=W2{γ+σ(100–t3)} (Kcal/h)
W2:除去水分量(Kg/h)、γ:蒸発潜熱(540)(Kcal/Kg)
t3:初期水分温度(℃)、σ:比熱1kcal/Kg・℃
5. 駆動部持ち出し熱量(Q3)
Q3=c2W2S×60(t3–t4) (Kcal/h)
c2:駆動部比熱(Kcal/h)、W2:駆動部重量(Kg/m)、
S:コンベアスピード(m/min)、t3:駆動部昇温温度(℃)
t4:駆動部初期温度(℃)
6. 開口部流出熱量 (Q4)
Q4=c3A1υ×60×60(t5–t6) (Kcal/h)
c3:空気比熱(Kcal/m3・℃)、A1:開口部面積(m2)通常は開口部総面
積の1/3として計算、υ:流出風速(m/s)通常は炉内温度100~
200℃で1~3m/sで計算、t5:炉内温度(℃)t6:外気温度(℃)
7. 排気熱量(Q5)
Q5=c3M(t5–t6) (Kcal/h)
M:排気量(m3/h)水切り乾燥時のM=発生蒸気量(m3/h)×1/0.05
簡便的にはM=炉内体積(m3)×炉内排気回数(回/h)として計算し、炉内
排気回数を水分乾燥、溶剤乾燥の場合20~30回/h以上の強制排気をする。
8. 炉壁損失熱量(Q6)
Q6=κA2 (Kcal/h)
κ:炉壁損失係数(Kcal/m2・h)=λ(t5–t6)L (Kcal/m2・h)
λ:熱伝導係数(Kcal/m2・h・℃)、L:炉壁厚み(m)
例:50mm岩綿使用温度差200℃の場合、κ=0.062×200/0.05=248
※ 装置設計の例
(1) 炉体仕様
① 被加熱物の目的
金属鋼板の表面にアクリル樹脂塗料をコーティングして乾燥する。
② 炉体構造
ベルトコンベアの連続搬送方式で、パネルヒーターを上部取付とする。
③ 乾燥条件
処理温度:130℃、処理時間:6分
④ 搬送方法
ネットコンベア使用で、流れ方向のピッチを500mmとする。
コンベア重量は10kg/mとし、搬送速度Sは
S=60個/60min×0.5m=0.5m/min
加熱装置長Lは L=0.5m/min×6min=3m
⑤ その他
(2) 熱量計算
ストレート型ヒーター仕様の場合
パイプ長800mm炉内加熱長3mからヒーター取付ピッチ200mmで750W以上のヒーターを15本設置する。
パネルヒーター仕様の場合
300×400mmヒーターを幅2列、流れ方向に9列配置すると18枚のヒーター数となり、600W以上のヒーターを選定することになる。
※ 実際には上記よりW数の高い標準ヒーターを用い、温度制御する場合がほとんどである。